新規入場者教育は法律で義務ですか
ただし元請(特定元方事業者)には、新しく入る人への周知を支える法律上の義務があります。やり方は国の指針が示しています。
e-Gov法令検索に収録された労働安全衛生法、同施行令、同規則の全文を確認しました。「新規入場」という言葉はどこにも出てきません。現場で使われている「新規入場者教育」は、国の指針で使われている呼び方です。
法令とのつながりは次の3つです。
- 雇入れ時の教育:労働者を雇い入れたときに、雇用主が行う義務です(労働安全衛生法第59条第1項)。違反すると50万円以下の罰金の対象です(同法第120条第1号)。
- 元請による場所・資料の提供:建設業の特定元方事業者は、関係請負人が新たに作業に従事する人へ、現場の状況や危険な箇所、作業相互の関係などを周知できるよう、場所や資料の提供などをしなければなりません(労働安全衛生規則第642条の3)。元請が自分で周知する場合は、この限りではありません。
- 指針による実施方法:平成7年の通達「元方事業者による建設現場安全管理指針」が、新規入場者教育の進め方を示しています。
この指針は、元方事業者が実施することが「望ましい」安全管理の具体的な手法を示したものです。通達には、現場で実際に行われている好事例からまとめたとも書かれています。罰則のある条文そのものではありませんが、労働基準行政が周知を進めている内容です。
根拠:労働安全衛生法第59条・第120条、労働安全衛生規則第642条の3、平成7年4月21日 基発第267号の2
雇入れ時教育とはどう違いますか
雇入れ時教育は「仕事そのもの」の安全、新規入場者教育は「その現場」の安全を教えるものです。
雇入れ時教育は、雇用主が行います。雇い入れたときに遅滞なく、従事する業務について次の8項目のうち必要なことを教えます(労働安全衛生規則第35条第1項)。
- 機械や原材料の危険性・有害性と取扱い方法
- 安全装置や保護具の性能と取扱い方法
- 作業手順
- 作業開始時の点検
- その業務で起こるおそれのある病気の原因と予防
- 整理、整頓と清潔の保持
- 事故時の応急措置と退避
- その他、業務の安全衛生に必要なこと
十分な知識と技能がある人については、その項目を省略できます(同条第2項)。また、作業内容を変更したときにも同じ教育が必要です(法第59条第2項)。
新規入場者教育は、指針では関係請負人(下請)が行うものとされています。その建設現場で新たに作業に従事する前に、現場の特性を踏まえて職長等から伝えます。元請はそのための場所や資料の提供などで援助し、実施状況の報告を受けて把握します。
雇入れ時教育は会社に入ったときの教育です。新規入場者教育は、現場に入るたびに行う教育です。どちらか一方を行えば他方を省けるという定めは、法令にも指針にもありません。
根拠:労働安全衛生法第59条第1項・第2項、労働安全衛生規則第35条、元方事業者による建設現場安全管理指針 第2の9・第2の14(8)
送り出し教育とは何ですか
法令の条文に出てくる言葉ではありません。現場の慣行として使われている呼び方です。
厚生労働省の外国人労働者向け安全衛生教材(建設業)では、「協力会社が作業者を建設現場に送り出す前に、安全教育等を行う送り出し教育等を実施します」と説明されています。同じ教材は、新規入場者教育を「建設現場に新たに入場する作業者に対し、現場の状況、作業概要、危険個所、現場のルール等の教育を実施」するものとしています。
労働安全衛生法と同規則の全文には「送り出し」という言葉はありません。送り出し教育の内容や時間を定めた法令も見当たりません。
実務では、送り出す前に次のことを自社で確かめる機会として使えます。
- 雇入れ時教育や作業内容変更時の教育が済んでいるか
- その現場で使う機械や作業に必要な特別教育・技能講習・免許があるか
- 元請へ通知する資格や教育の情報がそろっているか
根拠:厚生労働省「外国人労働者に対する安全衛生教育教材作成事業(建設業)共通『建設現場全般』」
ほかに必要な法定の教育はありますか
どちらも雇用主が行う義務です。元請への通知の対象にもなっています。
特別教育は、危険または有害な業務に就かせるときに必要です(法第59条第3項)。対象の業務は労働安全衛生規則第36条に列挙されています。建設現場に関係が深いものには、次のような業務があります。
- 足場の組立て、解体または変更の作業に係る業務(第39号)
- 高さ2メートル以上で作業床を設けることが困難な所でのフルハーネス型墜落制止用器具を用いる作業(第41号)
- つり上げ荷重1トン未満のクレーン等の玉掛けの業務(第19号)
- 作業床の高さ10メートル未満の高所作業車の運転(第10号の5)
特別教育を行わずに業務に就かせると、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(法第119条第1号)。
職長教育は、新たに職長などになった人に行う教育です(法第60条)。対象の業種には建設業が含まれます(施行令第19条)。教える事項と時間は規則第40条の表で決まっており、合計すると12時間以上になります。
指針は、関係請負人が作業員の免許・資格の取得や、特別教育・職長教育の受講の有無を把握することを求めています。そして新たに作業する人については、その現場で作業に従事する前までに元請へ通知するとされています。作業員名簿の教育・資格の欄は、この通知に使えます。
根拠:労働安全衛生法第59条第3項・第60条・第119条、同施行令第19条、労働安全衛生規則第36条・第40条、指針 第2の14(3)
新規入場者教育では何を伝えますか
作業従事前に、その現場の特性を踏まえて職長等から周知し、結果を元請に報告するとされています。
指針の「関係請負人が実施する事項」では、次の8項目が示されています。チェックリストとして使えます。
- 元請と下請の労働者が混在して作業を行う場所の状況
- 労働者に危険を生ずる箇所の状況(危険有害箇所と立入禁止区域)
- 混在作業場所で行われる作業相互の関係
- 避難の方法
- 指揮命令系統
- 担当する作業内容と労働災害防止対策
- 安全衛生に関する規程
- 建設現場の安全衛生管理の基本方針、目標、その他基本的な労働災害防止対策を定めた計画
前に挙げた厚生労働省の教材では、新規入場者教育の際に本人の実務経験や健康状態などを確認し、適正配置の参考にするとしています。
元請が自分で教育を行う形も認められています。規則第642条の3のただし書は、元請が自ら周知する場合を想定しています。平成19年の通達「建設業における総合的労働災害防止対策の推進について」も、必要に応じて元方事業者が自ら新規入場者教育を行うこととしています。
根拠:指針 第2の14(8)、労働安全衛生規則第642条の3、平成19年3月22日 基発第0322002号
記録はどう残せばよいですか
報告には全建統一様式第7号「新規入場時等教育実施報告書」がよく使われます。
教育の種類ごとに、記録の扱いが違います。
- 特別教育:受講者、科目等の記録を作成し、3年間保存する義務があります(規則第38条)。
- 雇入れ時教育・職長教育:規則第35条と第40条には、記録の保存を求める定めはありません。
- 新規入場者教育:指針では、関係請負人が結果を元請に報告し、元請はそれを把握するとされています。
保存の義務がない教育でも、実施したことを後から示せるよう記録を残すと安心です。特別教育の記録にならって、次の内容を書いておくと整理しやすくなります。
- 実施日と場所
- 教育を行った人(職長等)
- 受けた人の氏名
- 伝えた項目(上の8項目のどれを扱ったか)
第7号の書き方は全建統一様式第7号の解説にまとめています。報告書は書式メーカーで、項目を選んで作れます。
新規入場時教育の報告書を作る根拠:労働安全衛生規則第35条・第38条・第40条、指針 第2の9・第2の14(8)
根拠にした資料
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